社会福祉法人聖ヨハネ会 桜町病院

 

診療日 :月曜日~土曜日(祝日・年末年始を除く)
初診受付時間 :午前8時30分~午前11時30分
 (整形外科 ~午前11時 )
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麻酔科

麻酔科

桜町病院麻酔科は、杏林大学麻酔科から常勤医師と非常勤医師の派遣を受けています。麻酔薬や麻酔法に関する最新の知見を取り入れ、感染予防策や安全管理面では大学と連携してより安全な方法を習得し、患者さんが安心・安全に手術を受けて合併症なく退院できるように努めています。
2020年4月より、麻酔科常勤医が2名に増え、午前中から麻酔科医2名で麻酔管理ができるようになりました。安全により多くの手術を行えるよう、丁寧で質の高い麻酔を心がけています。

手術前日に、麻酔科医が病室にお伺いして診察いたします。ご不明な点は何でもご質問ください。
手術中の痛みを取るだけでなく、術後の痛みも和らげるよう、麻酔方法を工夫しています。
手術翌日にも診察に伺います。手術室で困ったことはなかったかどうか、術後の痛みはどうか、吐き気、のどの痛みなどについてお伺いします。

桜町病院で行っている主な麻酔方法

<全身麻酔>
 手術中眠っている麻酔です。マスクを顔に当て、点滴から眠くなる薬が入って眠ります。眠った後、のどに息を助ける細い管を入れます(挿管といいます)。細い管ではなくて、口の中に器具(ラリンジアルマスクといいます)を入れることもあります(手術時間が短く、腹腔鏡ではない手術:子宮鏡の手術など)。手術が終わってから10分くらいで目が覚めます。目が覚めたら管や器具を抜き、病室に帰ります。

<静脈麻酔>全身麻酔の挿絵①→②→⑤
 流産手術など、短時間の処置の時に行います。
のどに管や器具は入りません。マスクを当てて、点滴の薬で眠ります。10分くらいで目が覚めます。

<硬膜外麻酔>
背中の皮膚に局所麻酔の注射を行った後、少し太めの針を背中から入れて、背中に細い管を入れます。局所麻酔が入るときは圧迫感があります。少し痛いです。そのあと押されるような感じがします。ボトルのような入れ物から少しずつ痛み止めが入り、痛みを和らげます。痛み止めは1-2日間入ります。

<脊髄くも膜下麻酔:腰椎麻酔、脊椎麻酔、下半身麻酔、とも言われます>
 背中の皮膚に局所麻酔の注射を行った後、細い針を背中に入れ、髄液の位置まで達したところで薬を入れます。すぐに足が温かくなってきて、動かしにくくなります。麻酔はおなかの上の方まで効きますが、手術中、引っ張ったり押されたりする感覚は残ります。麻酔の効果は3-4時間で切れはじめ、半日くらいで元通りになります。次の日起き上がった時に頭が痛くなることがありますので、その場合はすぐに看護師さんに伝えてください。



  「麻酔を受けられる方へ」監修 並木昭義先生 図と文 松本真希先生 提供 アボットジャパン株式会社より許可を得て転載

*背中の麻酔(硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔)は、背骨の手術をした方には行いません。全身麻酔となります。
*背中の麻酔中は急に動くと危険です(背中に入っている針が深く入ってしまうことがあります)。不安が和らぐよう、声をかけながら麻酔を行っていきます。もし、足にひびく感じが出たらすぐに教えてください。

<末梢神経ブロック>
近年、超音波診断装置の進歩に伴い、創部に近い場所で痛みを伝える神経に局所麻酔を行い、痛みをやわらげるという方法が一般的になってきました。当院でも創が小さい腹腔鏡の手術やソケイヘルニアの手術で行っています。全身麻酔で眠った後、超音波診断装置で局所麻酔を行う場所を確認しながら薬を注入していきます。鎮痛効果は数時間から半日なので、他の鎮痛薬も使いながら痛みをやわらげていきます。

桜町病院で行っている主な手術と麻酔方法

<外科>

手術 全身麻酔 硬膜外麻酔 抹消神経ブロック
開腹手術  
腹腔鏡下胆のう摘出術  
ソケイヘルニア手術  

 開腹手術:全身麻酔と硬膜外麻酔
 まず、硬膜外麻酔を行い、その後全身麻酔で眠ります。

 腹腔鏡下胆のう摘出術:全身麻酔と抹消神経ブロック(腹直筋鞘ブロック、腹横筋膜面ブロック)
 全身麻酔で眠った後、超音波エコー装置を用いて手術創の近く(脇腹)に局所麻酔薬を注射し、痛みをやわらげます。

 ソケイヘルニア:硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔
手術中の痛み止めに脊髄くも膜下麻酔、術後の痛み止めに硬膜外麻酔を行います。背中の麻酔を2か所行います。背中の真ん中あたりと腰骨のあたりです。まず、硬膜外麻酔を行います。次に、脊髄くも膜下麻酔を行います。

<整形外科>

 手術 全身麻酔 脊髄くも膜下麻酔
 背骨の手術  
 人工股関節置換術
 (股関節、膝関節)
 膝関節鏡  
 足の骨折
 手、腕の骨折  

 背骨の手術(頸椎、胸椎、腰椎)
 うつ伏せの手術が多いですが、眠っている間に私たちが体を移動させますので、眠るとき、起きたときは仰向けです。背中の創のところに局所麻酔を行い、術後の痛みを和らげます。また、点滴からも痛み止めの薬を入れます。

 人工膝・股関節置換術
 まず背中の麻酔を行います。そのあと全身麻酔を行い、手術中は眠っています。手術の創のところにも痛み止めの注射を行い、術後の痛みを和らげます。

 膝関節鏡の手術
 創が小さいので、背中の麻酔は行わず、全身麻酔で行います。手術終了時に膝の創のところに局所麻酔を行い、術後の痛みを和らげます。

 その他の足の手術(骨折など)
全身麻酔 または 脊髄くも膜下麻酔 もしくは両方で行います。

 腕の手術
全身麻酔で行います。

<産科>

 手術 全身麻酔 硬膜外麻酔 脊髄くも膜下麻酔 抹消神経ブロック 静脈麻酔
 帝王切開      
 頸管縫縮術        
 妊娠中の卵巣腫瘍手術(腹腔鏡)      
 流産手術        
 子宮外妊娠手術(腹腔鏡)      

 帝王切開
手術中の痛み止めに脊髄くも膜下麻酔、術後の痛み止めに硬膜外麻酔を行います。背中の麻酔を2か所行います。背中の真ん中あたりと腰骨のあたりです。まず、硬膜外麻酔を行います。次に、脊髄くも膜下麻酔を行います。手術中は起きています。痛くはありませんが、おなかを押されたり引っ張られたりする感覚があります。痛みがある場合、途中で痛くなってきたときには痛み止めを追加します(硬膜外麻酔のカテーテルから痛み止めを追加します)。

 頸管縫縮術、妊娠中の卵巣腫瘍などの手術
 妊娠中の手術は、赤ちゃんへの麻酔薬の影響を少なくするために、全身麻酔を避け、背中の麻酔で行っています。やむを得ないとき(麻酔が効かないとき)は全身麻酔で行います。全身麻酔の場合でも妊娠の初めの頃でなければ赤ちゃんには大きな影響はありません。

<婦人科>

 手術 全身麻酔 硬膜外麻酔 抹消神経ブロック 静脈麻酔
 子宮鏡下手術
(ポリープ切除術、子宮筋腫摘出術)
     
 腹腔鏡下手術
(卵巣手術、子宮筋腫核出術)
   
 腹腔鏡下 子宮全摘術      
 小切開手術
(卵巣手術、子宮筋腫核出術)
   
 開腹手術
(卵巣手術、子宮筋腫核出術、子宮全摘術)
   
 子宮内膜全面掻爬      

子宮鏡下手術
出血や不妊の原因となる子宮内膜ポリープや子宮粘膜下筋腫の手術を多く行っています。手術当日に入院します。全身麻酔で行うので、眠っている間に終わります。点滴からの薬で眠った後、ラリンジアルマスクという息の通り道を助ける器具を口の中に入れ、酸素と麻酔薬を体に送ります。手術後10分くらいで目が覚めます。目が覚めたらすぐに器具は口から取り出します。眠たいので覚えている人は少ないです。のどに管が入る挿管に比べてのどの痛みはありませんが、口の中の違和感が1日くらい続くことがあります。術後の痛みは重い生理痛のような感じが1-2時間続きます。麻酔中に痛み止めの点滴をして痛みを抑えるようにしています。手術後痛みが続く場合は痛み止めを追加します。

腹腔鏡下手術
皮下鋼線吊り上げ法という方法で腹腔鏡の手術を行っています(詳しくは婦人科HP)。全身麻酔で行います。頭低位(頭を低くして足を高くする姿勢)を取るため、体が落ちないよう、肩に保護板を当てます。このため、術後肩が痛くなることがあります。スポンジを当てて痛みを和らげるよう工夫しています。痛みが強い場合は、湿布を貼るなど対応を行っています。また、おなかを上に引っ張るため、おなかの上の方(肋骨の下あたり)や下の方(下腹部全体)が筋肉痛のような痛みを感じることがあります。この場合は、点滴の痛み止めを使って痛みを和らげています。おなかの創(約1㎝)の部分には末梢神経ブロック(腹横筋膜面ブロック)を行っています。全身麻酔で眠った後、超音波エコー装置を用いて手術創の近くに局所麻酔薬を注射し、痛みをやわらげます。

腹腔鏡下子宮全摘術:全身麻酔で行います。術後は、点滴から少しずつ痛み止めの薬を入れて痛みをやわらげます。

小切開・開腹手術:全身麻酔と硬膜外麻酔で行います。

 

麻酔で起こりうること<合併症について>

口唇裂傷、歯の損傷、咽頭痛、声のかすれ、吐き気、嘔吐、不整脈、気管支痙攣(喘息発作)、肺炎、気胸、肝機能障害、腎機能障害、せん妄、頭痛、神経損傷、局所麻酔薬中毒、硬膜外カテーテル遺残、薬剤アレルギー等があります。また、ごくまれに肺梗塞、心筋梗塞、脳血管障害、悪性高熱(悪性高熱は遺伝性があると言われていますので、血縁者に麻酔に関して原因不明のトラブルがあった方は主治医にお伝えください)等があります。

主な合併症について説明いたします。

アナフィラキシーショック:薬による重篤なアレルギーです。麻酔中に使う薬剤の種類は多いです。様々な作用の薬を組み合わせて麻酔を行っているためです。以前に麻酔を受けた方で、1度目に使ったときは問題なくても、2回目以降にアレルギーが起こることがあります。蕁麻疹が出たり、体が赤くなったり、脈が速くなる、血圧が下がる、起きている患者さんでは息が苦しくなることがあります。すぐに治療を行いますが、重症な時は手術を延期することがあります。

歯の損傷:口の中に息を助ける器具を入れるときに、器具が上の前歯に当たって欠けたり抜けたりすることがあります。グラグラしている歯があるときは、余計にグラグラしたり抜けたりする可能性が高くなります。手術前の診察では、口の開き具合、歯の状態を詳しく拝見します。歯の損傷が起こらないように、器具の種類を工夫して、安全に行っていますので、めったに起こりません。もしも歯の損傷が起こってしまった場合は、退院後に治療していただくことをご了承ください。

声のかすれ、のどの痛み:全身麻酔を受けた後、1-2日のどがイガイガしたり、違和感を感じることがあります。のどや口の中に入っていた器具の影響です。長くても約1週間で治ります。声のかすれは半年くらい続くことがあります。

吐き気・嘔吐:全身麻酔の後、吐き気が出ることがあります。女性、車酔いしやすい方に多いです。吸入麻酔薬の影響が大きいです。吐き気がつらいときは吐気止めを使います。すぐに良くなる人、一晩続く人、様々です。

神経障害:硬膜外麻酔を行っているときに針が神経の近くに触れると、足がビリっとする感じが出ることがごくまれにあります。ビリっとした感じが長く続くことがごくまれにあります。そうならないよう、丁寧に行っています。手術の後、硬膜外麻酔のカテーテルが入っているときに、太ももが温かい感じがしたり、足のしびれる感じが出ることがあります。これは、カテーテルや薬の影響によるものです。カテーテルの位置を調整したり、薬を調整するなど、対応をします。

硬膜外カテーテル遺残:硬膜外カテーテル挿入時や抜去時にカテーテルが体内で切れてしまい、体の中に残ってしまうことがあります。カテーテルが体内に遺残してもアレルギーは起こりませんが、残っているカテーテルが長い場合や足のしびれなど神経症状がある場合は、手術でカテーテルを取り除く必要があります。

麻酔によって生命に関わる重大な合併症が起こるのは数万件に1例と言われています。合併症が発生した場合には、最善の治療を行います。

 

<無痛分娩について>
 桜町病院では、以前より産婦人科医が無痛分娩を行っています。麻酔科は、痛くなくいきめて、安全に無痛分娩が行えるよう、硬膜外麻酔の指導や分娩時に使用する薬剤に関するアドバイスを行い、産婦人科をサポートしています。JALA登録施設として、安全なお産が行えるよう、緊急時の対応も含めて体制を整えています。